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7 デーヴィッド・アーウィン著/鈴木杜幾子訳『新古典主義』(2001年 岩波書店)のこと その①(コピーや転載は固くお断りします)

2000年から数年にわたって刊行された「岩波 世界の美術」(全24巻 原著はPhaidon Press刊)の一巻。写真にあるように、この全集は編年体でも芸術家別でもなく、世界美術を網羅しているわけでもない。『セザンヌ』などというどの全集でも入っていそうな巻があるかと思えば、『アボリジニ美術』のように、日本語の参考書が少なそうなテーマの巻もある。拙訳の『新古典主義』についても、このテーマでまとまった概説書は日本語では存在しない。
実はこれだけ西洋美術が日本で人気があっても、日本語で読める本が扱っている題材はかなり偏っている。その芸術家についての単著(個人画集含めて)が存在するのは、ルネサンスから19世紀末までで10人くらいではなかろうか。ミケランジェロレンブラントドラクロワゴッホなどの「常連」については何冊もあるが、ラファエロプッサンダヴィッドなど「古典主義系」の芸術家はぐっと少なくなるはずである。その理由は、日本の出版界やメディア世界が「知的」アートより「激情系」を持ち上げる傾向があり、読者もそれに慣らされているからではないかと筆者は思っている。本当は「知的」アートも作家の情念から生まれるし、「激情系」の作家も冷静な技術的計算なしによい作品を生むことはできないのだが。
だからこの巻の翻訳を依頼されたときには嬉しかった。その前に原書には目を通していて、これが貴重な新古典主義概説書であるだけではなく、まったく新機軸の新古典主義観を示していることを知っていたからである。判型は小さいが447頁あり、ずっしりと重いのは他の巻も同じである。全巻写真中央付近に『新古典主義』の原著があり、日本語版は次の写真で示す。

岩波 世界の美術

新古典主義』の巻