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9 デーヴィッド・アーウィン著/鈴木杜幾子訳『新古典主義』(2001年 岩波書店)のこと その③(コピーや転載は固くお断りします)

本書の翻訳に取りかかる前、筆者はすでに小学館の世界美術大全集の『新古典主義と革命期美術』(1993年)に、編者兼執筆者として、ダヴィッドと政治史の関わりについて書いていたし、単著『画家ダヴィッド 革命の表現者から皇帝の首席画家へ』( 1991年 晶文社)も、タイトルに明らかなように同様な視点からのもので、フランス以外の地域の新古典主義も、ヨーロッパ内での「新古典主義国際様式」として扱っている。
その後著者は、もっと多様な視野からの新古典主義論を書きたいと漠然と考えるようになったが、具体的には何も手つかずのまま出会ったのが本書だった。翻訳作業を通じて、これが自分では書き得なかった規模の内容であることを実感。巻末の参考文献はかなり精選されたものではあるが100点以上にのぼり、しかも数カ国語にわたる。参考図版は242点。参考地図はグリーンランドからアルゼンチンやオーストラリアにまで拡がる。個人的能力はさておき、満足な美術図書館もない日本の一研究者の手に届くテーマではない。だが、まさに自分が書きたかった本を翻訳できたというのが実感であった。筆者はその後新古典主義の身体表象研究に重点を置くようになり、そこから現代美術とジェンダー論に関心を持ちはじめ、このブログにしばしば登場するもう一つのハッシュタグ「ルイーズ・ブルジョワ」が登場することになるのである。
本書日本語版に挟み込まれるために書いた「訳者解題」を付しておこう。20年以上前の文章なのであまり読みやすくないかもしれないけれど。